昨今、中井やまゆり園の職員による障害者への虐待が問題となっています。
「殴る蹴る」「肛門にナット」「寿司に大量わさび」
耳を疑うような虐待ばかりですが、それはやまゆり園だけの問題ではなく世界各地でも起こっているようで、思わず目をそむけたくなってしまうものばかりです。
そこで今回は世界でも行われている虐待動画を見ながら、なぜ職員が暴力を振るうようになったのか、その理由を考えてみたいと思います。
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中井やまゆり園の虐待動画
中井やまゆり園(神奈川県)では2015年度から判明している虐待事例41件、関与している職員76名、調査中の問題40件と常習的かつ集団的に虐待が行われていたことが明らかになっています。
場所はこちら↓
大量殺人があった津久井やまゆり園と名前が似ていますが、運営が津久井は社会福祉法人、中井は県での運営となっていますので、今回は県職員による虐待です。
この件を調べたところ、床に座り込む入所者を職員が運ぼうとしたところ腕に嚙みついたとのこと。
決して暴力を肯定できるものではありませんが、職員に噛みつく入所者もいれば大便を床に投げつける入所者もおり、想像の範疇を超えた行動を取る入所者と職員は接しています。
とてつもないストレスを抱え込んで暴力という衝動に走ってしまうのかもしれません。
海外における障害者に対する虐待
日本と同じように海外でも職員による障害者に対する虐待が横行しているようです。
↓の動画は他害的行動(人や物に危害を加える)を取る障害者に対して暴行する職員の動画です。
これが日常的に行われているとしたらとても恐ろしいことです。
【閲覧注意】こちらはかなりセンシティブな動画になります。
とても人に対するものとは思えないような扱い方をしています。
入所者も抵抗して噛みついていますが、その行為にさらに激昂したのか車いすから引きずりおろして抑え込んでいます。
どの動画も不思議なのですが、入所者がとてつもない暴力にさらされているにも関わらず、誰もそれを止めようとしないのです。
むしろ駆けつけていた職員が暴行を受けている入所者にさらに暴力を振るう場面もありました。
以上のことからわかることは
暴力が横行する職場では、ほぼ全ての職員がとてつもないストレスを抱えており、入所者に暴力を振るうことでストレスを発散している。
特定の入所者への暴行が常態化しており、周りの職員はその状況に慣れてしまっている。
ということです。
これらがエスカレートして最終的に行きついたのが津久井やまゆり園の事件なのではないでしょうか。
なぜ暴力を振るうのか
虐待の動画を見て思うのは「全ての職員が最初から暴力を振るうような人間だったのか」ということです。
はじめはみな奉仕の精神を持って介護職についた気高い心の持ち主だったはず。
なぜ、職員が暴力を振るう人物に変貌したのか、それは怒りの感情にスポットを当てれば辿り着けます。
怒りの原点
人間は暴力を振るう前にまず「怒り」の感情が湧いてきます。
平成かぐらクリニックの伊藤院長によると以下のような状況の時に人間は怒るそうです。
・価値観や自尊心を守る
・危険な状況に陥ったとき
・他者に対する要望
この怒り自体は人間の防衛本能であり、失くすことができないとのこと。
思い返してみれば物事がうまくいかないときにイライラしたり、癪に障ることを言われてムッとした経験は誰にでもありますよね。
あれはいわゆる自分を守るためのものだったんですね。
動物の威嚇とある意味一緒なのかも。
また、怒りというのは二次感情というものであって、怒りの前に必ず来る一次感情というものがあるそうです。
それが、不安、悲しみ、恐れ、寂しさ、困惑、恥ずかしい気持ち。
(参考:御池メンタルサポートセンター、平成医会「怒りの感情との付き合い方」)
怒りの前にさらにもう一段階あったんですね。
ということはあの場所で働く職員にとって
「大便を天井に投げる入所者」も
「噛みついてくる入所者」も
「むやみやたらに叫ぶ入所者」も
全て職員にとって理解不能な行動であり、恐れや不安、困惑するため、怒りという感情が湧いてきたということなのでしょう。
これらのことから職員が元々暴力的だったのではなく、環境的に暴力を振るうようになってしまったことがわかりますね。
なぜ施設内で暴力がエスカレートするのか
怒りは人間が本来持っている防衛本能であり、他者を思い通りにしたり、自身の安全や精神を守るために怒り、それは不安や恐れ、困惑などから生じるものだとわかりました。
それではなぜ施設内で暴力が留まることを知らずにエスカレートしていくのでしょうか。
怒って人や物に当たると逆効果
暴力がエスカレートする原因は他者や物に当たるとより攻撃性が増すからだそうです。
アメリカの心理学学会ASP(心理科学協会)の研究によると被験者に釘を打たせる実験で被験者をバカにするような人を登場させると、よりその人のことが嫌いになるという結果が出ました。
また、血が飛び散るような暴力的なゲームもその人が生活する中でより攻撃性が増す要因になるとのこと。
巷では物を殴ったり、破壊することでストレスを発散させるセラピーがありますが、それは実は逆効果ということなんですね。
職員が理解不能な行動を取る入所者に対して怒り、溜まったストレスを発散させるために暴力を振るう。
そして入所者に当たることでより攻撃性が増して更に入所者を暴行する。
また、施設内で入所者を暴行している光景を何度も目の当たりにすると、それを見ている人も次第に攻撃性が増してくるのかもしれません。
環境的に怒りポイント(不安や恐れや困惑するポイント)が多い職場というのもあると思いますが、中井やまゆり園や世界の介護施設の虐待もこのようなプロセスで虐待が常態化しているのではないでしょうか。
【まとめ】なぜ暴力を振るうのか
【まとめ】なぜ暴力を振るうのか ・中井やまゆり園で行われている虐待が表面化し、問題となっている。 ・障害者養護施設ではやまゆり園だけでなく、海外でも虐待が常態化している施設がある。 ・虐待に至った要因は障害者の行動によって職員が不安や恐れ、または困惑し、それらが怒りの感情に変わって暴力に発展したことが要因。 ・虐待がエスカレートした原因は入所者を暴行してストレスを発散することで更に攻撃性が増したことが原因。
中井やまゆり園の虐待はあくまで氷山の一角であって、私たちの知らないところで今も傷ついている要介護者の方がいるように思います。
虐待されている障害者の方に対して「人間らしい生活を送れていない」という文言を見かけますが、障害者の方々に手を挙げる職員の方も障害者の方と同様に苦しいのかもしれません。
入所者に対する暴力は決して正当化できるものではありませんが、この問題の根本的な解決にはまず、職員の心のケアと労働環境の整備(ちゃんと休める、給料が高い)が必要に思います。