病気の症状を和らげるはずの薬が死へと誘う薬に…。
アジア各国で相次いでいる咳止めシロップ飲用後の子供の死亡事故について、WHOは23日時点で300人以上の子供が死亡したと発表しました。
この問題となっている咳止めシロップには、工業製品であるジエチレングリコールという化学物質が混入されており、日本では飲用・食用には適さないとして禁止されている物質になります。
300人以上の子供の命を奪った一連の騒動ですが、その製薬会社はどこで、どんな商品名なのか。
今回はそこにスポットを当てて調べてみることにしました。
Contents
子供用咳止めシロップにジエチレングリコール
子供用咳止めシロップへのジエチレングリコール混入については、昨年10月ごろWHOが製薬会社に向けて警告してきたようですが、聞き入れずそのまま販売。
300人を超える子供が犠牲になりました。
ジエチレングリコールとは何か
このジエチレングリコールとは何か。
ジエチレングリコールは前述のとおり工業製品に一部使用されている化学物質で代表的なのが不凍液。
車の冷却水に用いることで冬季における冷却水の凍結を防ぐのにジエチレングリコールが使われています。
他にも潤滑剤やブレーキ液、接着剤や塗料にも使われており、様々な工業製品にジエチレングリコールが入っています。
味は甘いため、海外の製造会社によっては食品の甘味料として用いていたようですが、腎臓に有害であることから日本では飲用・食用には用いていません。
私たちも昔、口にしたことがある?
日本では基本的に食品に用いないジエチレングリコールですが、1985年オーストリアからの輸入ワインにジエチレングリコールが混入しており、輸入品の一部が日本に流通していたとして大問題になったことがあります。
また、中国で製造された歯磨き粉の中にもジエチレングリコールが含まれており、それが日本のビジネスホテルのアメニティで使われていた過去もあります。
もしかしたら口にしたことがある方もいるかもしれませんね。
なぜ咳止めシロップにジエチレングリコールを使うのか
人体へ悪影響があることから日本では食品に使用しないジエチレングリコールですが、なぜ問題の企業は咳止めシロップにジエチレングリコールを使用したのでしょうか。
その明確な理由はわかりませんが、調べてみるとジエチレングリコールは比較的安価であることがわかりました。
ジエチレングリコールは前述のとおり甘みがあるため、今回の事故のように問題の製薬会社では甘味料として添加していました。
一方日本では甘味料としてグリセリンが用いられることがありますが、1㎏あたりの価格を比較するとグリセリンよりもジエチレングリコールは安価であることがわかります。
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上の画像を参照すると1㎏あたりジエチレングリコールは550円、対してグリセリンは718円とジエチレングリコールの方が安く購入できます。
医薬品の製造コストを安く抑えるために、人体への影響を考えもせずに子供向けに販売していたのだとしたらとんでもないことですね。
問題となっている海外の製薬会社はどこか?
子供の死者を出したとして咳止めシロップの製造中止に追い込まれた製薬会社は一体どこなのか。
調べてみると1社はインドのノイダにある製薬会社マリオン・バイオテックで作られたことがわかりました。
この会社は政府の調査が入ったことによって問題のあったシロップを製造中止としています。
この製薬会社はインドではなくウズベキスタンに問題の製品を2種類流通させ、18人の子供の死者を出した模様です。
もう1社はガンビアで66人の子供の死者を出したインドのニューデリーにある製薬会社メイデン・ファーマシューティカルズ(以下メイデン)とされています。
メイデンは現在咳止めシロップの製造を中止していますが、ガンビアで問題となったシロップについて「汚染されておらず、政府の規則に準拠している」として製品の製造再開を模索していると言います。
(参考:INDIA TV、REUTERS)
政府もこの製薬会社の製造を黙認していたのだとしたら国家ぐるみでとんでもないことをしていますね。
ちなみにメイデンは4種類の咳止めシロップに問題があったとされています。
死の咳止めシロップ。その製品名は?
問題の企業が製造した咳止めシロップの製品名で判明しているのはマリオンバイテック社製のDok-1 Max(ドクワンマックス)、アンブロノールの2種類です。👇
(参考:NEWS18)
メイデン・ファーマシューティカルズからはマックオフベイビー、コフェックスマリン、マグリップコールド、プロメタジン・オーラルソリューションBPの4種類です。👇
今回問題が浮き彫りになったのは2社であり、どちらもインドの製薬会社でした。
この事故によってインドだけでなく世界規模でインドの製薬会社の品質が疑われることになり、大きな信用問題に発展したことは言うまでもないでしょう。
子供用咳止めシロップで死者多数。その製薬会社と製品名まとめ
・インド、アフリカなどで咳止めシロップを服用した子供が次々となくなっている事故でWHOは1月23日300人を超える子供が亡くなったと発表した。
・問題の咳止めシロップには工業製品に用いられるジエチレングリコールが混入されており、甘味料目的で添加したものと思われる。
・ジエチレングリコールは摂取した場合、腎機能に被害をもたらす有害物質である。
・問題の咳止めシロップを販売していた製薬会社で判明しているのは、メイデン・ファーマシューティカルズとマリオン・バイオテックの2社。
・問題となっている咳止めシロップの製品名は
①Dok-1 Max(ドクワンマックス)
②アンブロノール
③マックオフベイビー
④コフェックスマリン
⑤マグリップコールド
⑥プロメタジン・オーラルソリューションBP
の6種類である。